根本原因分析(なぜなぜ分析):問題の真因を突き止める方法

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「原因は人為的ミスでした」

SIer時代、システム障害の原因報告でこの結論を何度書いたかわかりません。しかし、「人為的ミス」で片付けた障害は、ほぼ確実に再発しました。なぜなら、「なぜ人為的ミスが起きたのか」を掘り下げていなかったからです。

根本原因分析(RCA: Root Cause Analysis)は、問題の「表面的な原因」ではなく「真の原因」にたどり着くための手法です。トヨタ生産方式の「5回のなぜ」として知られるこのアプローチは、製造業だけでなく、ビジネスのあらゆる場面で使えます。就活のケース面接でも、「なぜ?」を深く掘れるかどうかが分析力の差になります。

なぜなぜ分析とは何か

なぜなぜ分析(5 Whys)とは、問題に対して「なぜ?」を繰り返し問いかけ、表面的な原因を超えて根本原因(真因)にたどり着く分析手法です。

トヨタ自動車の創業者・豊田喜一郎の時代から受け継がれる手法で、トヨタ生産方式(TPS)の中核をなす考え方です。「5回」は目安であり、3回で真因に到達することもあれば、7回かかることもあります。大切なのは回数ではなく、「これ以上掘り下げても新しい原因が出てこない」レベルまで到達することです。

なぜ表面的な原因では解決しないのか

システム障害の原因を「人為的ミス」で片付けた失敗

SIer時代の実体験です。あるシステムで、オペレーターの操作ミスによるデータ不整合が発生しました。原因報告書には「オペレーターの確認不足」と書きました。対策は「チェックリストの追加」と「注意喚起」。

1ヶ月後、同じ障害が再発しました。別のオペレーターが、同じ操作で同じミスをした。チェックリストは追加したのに。なぜか。

改めて「なぜ?」を繰り返してみると、真因は全く違うところにありました。そもそもシステムの画面設計が紛らわしく、正しい操作と間違った操作が見た目で区別できなかった。「人間が間違えやすい設計」が放置されたまま、「人間に気をつけろ」と言っていた。これでは何度再発してもおかしくありません。

真因にたどり着いたあと、対策は「画面設計の改修」と「誤操作を防ぐバリデーション追加」に変わりました。以後、同じ障害は発生していません。この経験が、「なぜ?を深く掘ることの重要性」を私に叩き込んだ原体験です。

なぜなぜ分析の実践手順

Step 1: 問題を具体的に定義する

「売上が下がっている」ではなく、「営業部門の売上が前年比15%減少している」のように、数字と範囲を明確にします。曖昧な問題定義からは、曖昧な原因しか出てきません。

Step 2: 「なぜ?」を問いかける

問題に対して「なぜそうなっているのか?」を問います。答えは事実に基づいて出します。推測や感覚ではなく、データや証拠で裏付ける。「なんとなく」は「なぜ」の答えにはなりません。

Step 3: 答えに対してさらに「なぜ?」を繰り返す

最初の「なぜ」の答えに対して、さらに「なぜそうなっているのか?」を問います。これを3〜5回繰り返す。深く掘り進めるにつれて、原因が「個人の問題」から「仕組みの問題」に変わっていくのを感じるはずです。この変化が起きたら、真因に近づいている証拠です。

Step 4: 真因に対する対策を立てる

真因が特定できたら、その原因を取り除く対策を立てます。ポイントは「仕組みで解決する」こと。「気をつける」「注意する」は対策ではありません。プロセスを変える、システムを改修する、ルールを変える。人に依存しない再発防止策を設計します。

図解1: 5 Whysの掘り下げ例 ― 「売上減少」の真因は「システム変更による納品エラーの頻発」だった

良い「なぜ」と悪い「なぜ」

なぜなぜ分析は手順自体はシンプルですが、「なぜ」の質によって結果が大きく変わります。

悪い「なぜ」の特徴

  • 犯人探しになる: 「誰のせいか」を追い始めると、組織の誰かを責めて終わる。改善にはつながらない
  • 抽象的すぎる: 「やる気がない」「意識が低い」で止まる。これは原因ではなく感想
  • 1回で止める: 表面的な原因だけで満足してしまう。「確認不足でした」は原因の入口でしかない

良い「なぜ」の特徴

  • 仕組みに着目する: 「なぜミスが起きやすい設計になっているのか」のように、個人ではなくプロセスや制度を問う
  • 事実に基づく: データや記録に裏付けられた答えを出す。推測ではなく事実で掘り下げる
  • 再発防止につなげる: 真因に対する対策が「仕組みを変える」ものになっている

コンサルティングの現場で、この「良いなぜ」と「悪いなぜ」の違いを最も痛感したのは、事業会社に移ったときでした。社内の障害報告書を読むと、対策欄に「以後、注意する」「ダブルチェックを徹底する」と書いてある。これは「悪いなぜ」で止まった典型です。同じ障害が繰り返される理由が、対策そのものに書いてありました。

図解2: 良い「なぜ」と悪い「なぜ」― 「なぜ」の質が分析の深さと再発防止の実効性を決める

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まとめ

根本原因分析は、「なぜ?」を繰り返すだけのシンプルな手法です。しかし、そのシンプルさゆえに、「質の高いなぜ」を問えるかどうかで結果が天と地ほど変わります。

一つだけ覚えておいてほしいのは、「人を責めるなぜ」ではなく「仕組みを問うなぜ」を意識すること。「誰がミスをしたか」ではなく「なぜミスが起きやすい状態だったのか」。この問いの立て方ができるだけで、あなたの問題分析は一段深くなります。

就活のケース面接でも、「原因は何だと思いますか?」と聞かれたときに、表面的な答えで終わらず「その原因のさらに奥にある原因は」と掘り下げる。面接官が見ているのは、答えそのものではなく、問題をどこまで深く考えられる人かということです。


著者: Sam(柴山 治)

株式会社YOHACK 代表 | コンサルタント | エンジニア | 映像クリエイター | 著者・監修者

SIerでシステムを作り、ファームで戦略・業務・ITの提案を行い、

事業会社で「提案を受ける側」を経験し、

ファームに戻って経営の意思決定に関わり、そして創業しました。

DXのバリューチェーンを発注側・受注側の両方から見てきた経験が、

私のコンサルティングの土台になっています。

ワシントン大学フォスタービジネススクールMBA修了。

著書『日本型デジタル戦略』(クロスメディア・パブリッシング)等。

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