As-Is / To-Be分析とは何か ― 現状と理想のギャップを可視化する書き方・テンプレート

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As-Is / To-Be分析とは何か。現状(As-Is)とあるべき姿(To-Be)のギャップを可視化する手法を解説。そのまま使える書き方の3ステップとテンプレート・記入例、ギャップの優先順位づけまで、ケース面接や実務ですぐ使える手順を提示します。

【この記事の要点】

  • As-Is / To-Be分析とは、現状とあるべき姿のギャップを「解くべき問題」として可視化する手法
  • 書き方は3ステップ ― ①As-Isを事実で把握 ②To-Beを測定可能に定義 ③ギャップに優先順位
  • 記入例テンプレートは「業務プロセス/定量データ/組織・人材/IT」の4観点で書くと漏れない
  • ギャップは全部埋めない。インパクト×実現しやすさで「クイックウィン」から着手する

「何が問題かがわからない」。これが、一番の問題です。

DX推進でも、業務改革でも、キャリアの見直しでも、最初に突き当たる壁は同じです。「変えなければいけない」とは思っているが、何をどう変えればいいのかが見えない。この「もやもや」を構造的に整理するのが、As-Is / To-Be分析です。

私がコンサルティングやDX推進のプロジェクトで最初に必ず行うのが、このAs-Is / To-Be分析です。「まず現状を正確に把握する。次にあるべき姿を定義する。その差分が、解くべき問題になる」。このシンプルな構造が、あらゆる問題解決の出発点です。

As-Is / To-Be分析とは何か

【As-Is / To-Be分析(読み方: アズイズ・トゥービー分析)とは、現状(As-Is)とあるべき姿(To-Be)を明確に定義し、そのギャップ(Gap)を「解くべき問題」として可視化する手法。As-Isは英語で「今のまま(現状)」、To-Beは「あるべき姿」を意味し、ギャップ分析とも呼ばれる。】

「As-Is」と「To-Be」の2つを並べて比較することで、「何が足りないのか」「何を変えるべきか」が構造的に見えてきます。

ケース面接で「この企業の課題を分析してください」と言われたとき、「まず現状(As-Is)と目指す姿(To-Be)を整理させてください」と言えるだけで、分析の精度が一段上がります。問題を「症状」ではなく「ギャップ」として捉える視点が身につくからです。

図解1: As-Is / To-Be分析の基本構造 ― 現状とあるべき姿のギャップが「解くべき問題」になる

なぜギャップの「可視化」が出発点なのか

DX推進で最初にやるのは必ずAs-Is / To-Be

DX推進のコンサルティングで、最初のミーティングで経営者に必ず聞く質問があります。「3年後、御社はどうなっていたいですか?」そして「今、最も困っていることは何ですか?」この2つの質問が、To-BeとAs-Isの出発点です。

多くの企業で起きているのは、To-Be(あるべき姿)が曖昧なまま「何かを変えなければ」と動き始めるパターンです。「DXを推進する」「業務を効率化する」は方針であって、To-Beではない。「3年後に、データに基づく意思決定が全部門で行われている状態」のように、具体的な姿として定義する必要があります。

一方で、As-Is(現状)も正確に把握されていないケースが多い。「紙の業務が多い」は感覚的な認識であって、As-Isの分析ではない。「月間の帳票処理のうち62%が紙ベースで、1件あたり平均15分の手作業が発生している」のように、数字で捉えて初めてAs-Isの分析になります。

As-IsとTo-Beを具体的に定義すると、ギャップが自動的に浮かび上がります。「紙ベース62%をデジタル化率90%にする」「手作業15分を自動化で3分にする」。これが「解くべき問題」の正体です。ギャップが具体的であればあるほど、解決策も具体的になります。

As-Is / To-Be分析の書き方 ― 3ステップとテンプレート

Step 1: As-Is(現状)を正確に把握する

まず、現状を「事実」として可視化します。感覚や印象ではなく、データで裏付ける。

  • 業務プロセスの現状: 何を、誰が、どうやっているか。フローで可視化する
  • 定量データ: コスト、時間、エラー率、顧客満足度など。測れるものは測る
  • 組織・人材の現状: スキルレベル、人員配置、チーム間の連携状況
  • IT・システムの現状: 使用しているツール、データの管理状況、技術的負債

ここで陥りがちなのは「現状を美化すること」です。報告資料では「順調に進んでいる」と書かれていても、実態を見ると全然違う、ということは珍しくありません。事業会社時代に実感しましたが、現場の「不都合な真実」を正直に書き出すことが、As-Is分析の最も重要なポイントです。

Step 2: To-Be(あるべき姿)を定義する

次に「どうなりたいか」を具体的に描きます。理想像は、測定可能な状態で定義する。

  • ビジョンレベル: 「データ駆動型の経営が実現している」(方向性)
  • 指標レベル: 「全部門でBIツールが活用され、月次レポートが自動生成されている」(具体的な状態)
  • 数値レベル: 「紙ベース率を10%以下にする」「意思決定リードタイムを半減する」(定量目標)

To-Beを定義するとき、「完璧な理想」を追いすぎないことも大切です。「3年後」「1年後」のように時間軸を設定し、達成可能で意味のある目標を置く。これは戦略策定そのものです。

そのまま使える記入例テンプレート

As-IsとTo-Beは、次の4観点の表に書き出すと漏れなく整理できます。自社(あるいは自分)に当てはめて、セルを埋めてみてください。

観点
As-Is(現状)の
記入例
To-Be(あるべき姿)の
記入例
ギャップ=解くべき問題

業務プロセス

帳票処理の62%が紙。
1件15分の手作業

デジタル化率90%。
処理は自動で3分

紙業務のデジタル化・
自動化

定量データ

月次レポート作成に
5営業日

自動集計で
翌営業日に完成

集計の自動化・
データ統合

組織・人材

データ分析できる
人材が1名のみ

各部門に分析担当が
1名以上

分析人材の育成・採用

IT・システム

部門ごとに別システム。
データ散在

基幹データが1か所で
参照可能

システム連携・
データ基盤整備

表1: As-Is / To-Be分析の記入例テンプレート(4観点)

ポイントは、As-Isのセルに必ず数字か固有の事実を書くことです。「非効率」「属人化している」のような形容詞だけのセルは、まだAs-Isになっていません。

Step 3: ギャップを特定し、優先順位をつける

As-IsとTo-Beが定義できたら、その差分=ギャップを一覧にします。ここからが実践上のポイントです。ギャップは複数出てくるので、すべてを一度に埋めようとしてはいけません。

「インパクトの大きさ」と「実現のしやすさ」の2軸で優先順位をつけます。インパクトが大きく、実現しやすいギャップ ― いわゆる「クイックウィン」― から着手する。小さな成功体験が、組織全体の変革意欲を引き出します。

図解2: ギャップの優先順位づけ ― インパクト×実現しやすさで「どこから埋めるか」を判断する

実践のコツ・よくある落とし穴

  • As-Isを美化しない: 現場の不都合な真実を正直に書き出す。美化したAs-Isからは正しいギャップが出てこない
  • To-Beを抽象的にしない: 「効率化する」「DXを推進する」はTo-Beではなく方針。「何が、どの状態になっているか」を具体的に描く
  • ギャップを全部同時に埋めようとしない: 優先順位をつけて、クイックウィンから着手する
  • 一人で分析しない: As-Is / To-Beの定義は関係者を巻き込んで行う。視点が偏ると、重要なギャップを見落とす

まとめ

As-Is / To-Be分析は、「何が問題かわからない」という状態を「ギャップが見える」状態に変えるツールです。現状を正直に可視化し、あるべき姿を具体的に定義し、その差分に優先順位をつけて一つずつ埋めていく。このシンプルな構造が、あらゆる問題解決と変革の出発点になります。

就活でも使ってみてください。「今の自分(As-Is)」と「なりたい自分(To-Be)」を書き出す。そのギャップが、今から就活までに埋めるべき課題です。「なんとなく不安」を「具体的な課題リスト」に変える。それだけで、行動の方向性がクリアになるはずです。

よくある質問

As-IsとTo-Beは、どちらから書けばいいですか?

実務ではAs-Is(現状)から書き始めるのが取り組みやすい一方、現状に引きずられず大きな変革を描きたいときは、To-Be(あるべき姿)から先に描く「バックキャスト」が有効です。迷ったら、まずAs-Isを事実で埋めてからTo-Beを描き、最後に両者を往復して精度を上げてください。

ギャップ分析とAs-Is / To-Be分析は違うものですか?

ほぼ同じ手法を指します。As-IsとTo-Beを定義して差分を特定するプロセス全体をギャップ分析と呼ぶことが多く、As-Is / To-Be分析はその代表的な進め方です。重要なのは呼び方ではなく、ギャップを「測れる形」で特定できているかどうかです。

就活や転職でどう使えますか?

ケース面接では「現状と目指す姿を整理してから課題を特定する」という分析の型として使えます。自己分析では「今の自分(As-Is)」と「なりたい自分(To-Be)」を書き出せば、埋めるべきギャップがそのまま行動計画になります。志望動機の言語化にも効果的です。

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著者: Sam(柴山 治)

株式会社YOHACK 代表 | コンサルタント | エンジニア | 映像クリエイター | 著者・監修者

SIerでシステムを作り、ファームで戦略・業務・ITの提案を行い、

事業会社で「提案を受ける側」を経験し、

ファームに戻って経営の意思決定に関わり、そして創業しました。

DXのバリューチェーンを発注側・受注側の両方から見てきた経験が、

私のコンサルティングの土台になっています。

ワシントン大学フォスタービジネススクールMBA修了。

著書『日本型デジタル戦略』(クロスメディア・パブリッシング)等。

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